【神威組2020製作日誌】①初期構想【不定期連載】

 2019年11月9日、大阪シアターセブンでの「ハートボイルド・フィクション大阪凱旋上映会」前夜。東京からそれぞれ乗り込んだ神威組コアメンバー(神威杏次、坂本三成、萩田博之、蜂谷英昭)と、伊井たこすけさん夫妻、映画評論家の長嶺英貴さんの7名で、翌日の舞台挨拶トークのうちあわせを兼ねた食事会。ここで、主要メンバーにおおまかな構想と進捗を話し、翌日の舞台挨拶、大阪のお客様の前で「神威組2020、あります」と話したのが最初の公式告知でした。

 

f:id:kyojikamui:20200221211435j:plain


 さかのぼって8月頃。9月8日の東京プレミア上映会の告知をしながらも、すでに、2020の構想を固めるために、各方面をウロウロしていました。「神威組応援団長」「告知テロ部隊部長」伊井たこすけさんにも相談しながら、脚本や作品の構想ではなく「どんなメンバー構成で、どんな形でやるか」の大枠の構想です。

 作品にとって初期構想が最も重要なのは言うまでもないです。僕にとっての初期構想とは、すなわち「キャスティング」と「脚本」です。

 いきなり余談に飛びますが…、機材や技術が向上し、今や、誰でも簡単に「ドラマみたいなカット割りのそれっぽい映像」や「映画みたいな綺麗な風景」を撮れて、おまけにYouTubeで簡単に配信もできる時代。そこで、僕が武器とするべきは【脚本と俳優の力】だと確信しています。加えて、数々のプロの現場で覚えてきた「勘」でしょうか。どれだけ機材が発達しようと、どれだけ綺麗な映像が撮れるカメラを使っても、人間個々の長年のイキザマ、蓄積された努力や経験から生まれる「脚本(=原作)の力」と「俳優の力」は、そう簡単に真似できないからです。

 自分の脚本や神威組の俳優が「凄い」と自画自賛したいわけではないです。もちろん、まだまだ力不足です。ただ、目指しているのはそこです、というお話。

 プロデューサー的には、もっと現実的な「資金調達」や「入口出口」「マーケティング」なんてことが、本当は初期に考える事項になるのでしょうが、現在のところ、神威組は商業的なプロジェクトではないため、そこは後回しです。時系列がクラウドファンディングに差し掛かったあたりであらためて書くとしますが、僕が公表している「映画の製作費」の中に、ギャランティや人件費は一切含まれていません。その話はまた追々。

 ちなみに、俳優の力って何?というと、「華」と「演技力」でしょうか。僕はどんなキャラクターの俳優にも、こと映像に関しては「華」が必要だと思っています。正義でも悪でも、二枚目でも三枚目でも。「オーラ」と同義語か。そして「演技力」は絶対的な力になります。舞台も映画も「お芝居」ですから当然のお話です。僕の映画の出演者で演技が下手なのは神威杏次だけですw

 

 綺麗な海の映像を頑張って撮るヒマがあったら、うまく背景がボケた美しい映像を…なんて考えてる時間があったら、僕は、坂本三成や萩田博之や蜂谷英昭や加賀谷崇文の「目」を狙います。中川ミコや環みほの「笑顔」や「色香」を待ちます。彼らが特有に持つ「オーラ」をなんとかして映像に残そうと頑張ります。そのほうがよほど「唯一無二の景色」を撮れる可能性があるからです。

 話戻って…、そんな大事な初期構想であるキャスティング…のお話からになります。

 9月8日、座・高円寺2での「ハートボイルド・フィクション」プレミア上映の数日後、工藤俊作さんに会いに下北沢のバーへ。10月初旬、尼崎三和市場でのイベント時でご一緒した際に望月祐多さんに相談。同時期、萩原佐代子さんにはタコスケさんを通じて、それぞれ「可能性のご相談」をさせていただいたのが、最初の対外的な動きでした。

 ※望月さんのゆうの字は正しくは示に右。

▼キャスティングなど初動のことを書いた個人ブログ記事

 

 それ以前の9月某日、旧知の緒方夏生に会った時に「神威さんの映画に出たいですーーーーー!」「う、うん、わかった。」という会話があったので、出演内定第一弾は、実は、純愛ホリデイ夏生だったのですが。

f:id:kyojikamui:20200221211750j:plain

▲参考画像

 

 実のところ、キャスティングに関しては、僕が「こちらから一方的に選んで」いるわけではなくて、なにかの折に「出たい」と言う意思表示をしてくれた人の中から、状況に合わせてお声をかけさせていただく方が多いです。そりゃ「出たい」と熱望してくれる人に出てもらうに越したことはないからです。それが、以前に自分の脚本舞台でその魅力を確認済で、実は「ハートボイルド・フィクション」でも候補に挙げていた緒方夏生さんであれば、尚更、断る理由がなかったということ。むしろ「こちらこそお願いします」です。

 そして前述の11月9日、大阪の夜。神威組常連チームに概要と進捗を説明し、その時点で、基点となる主軸が見えてきました。

 で、初期段階のみなさんの感触を元に、ほぼアテガキで脚本を書きだしますが、正式にオファーを出すのは必ず脚本ができてからです。「どんな役でもいいから出たい」と言ってくださるのは嬉しいですが「必ず、脚本を読んでから回答をください」と言います。後になって「もう出るって言っちゃってるから(あまり気乗りしない脚本や役だけど)やらなきゃ仕方ない」というテンションで入ってきて欲しくないからです。

 ただ、それは遠慮がちに言ってるだけで、実際は前のめり気味に「OK」を頂く方が嬉しいに決まってます。初期段階で「仮オファー」をさせていただいた方々には、実をいうと、みなさん「ほぼ即答」を頂いていました。自分を信じてくれているという事ですから、そりゃ嬉しいです。それでも、脚本があがった段階で全員に「オファーになります。ご検討ください」という段階は踏みます。それは常連メンバーも同じです。神威組は劇団ではないので当然の段取りです。

 

 企画書には「自主製作です」「現場にスタッフいません」「ロケバスありません」「なんなら着替え場所をどうしようか頭を抱えてます」なんてことも全部書いてあり、例えば「この映画はこんな大きなところを狙います」だとか「この映画に出たらこんな良いことがあります」なんてハッタリは一切ありません。「確実にできること」と「ちょっと頑張ればできそうなこと」しか言わないのは、僕の昔からの性格です。そりゃ会社も潰すわけです。我ながらバカ正直だなと思います。

 最終的に決定した「スモーキー&ビター」の出演陣は、そんなこともこんなこともすべて含めて、力を貸してくれることになった有志たちというわけです。

 そんな動きをしていると、本当、すべては「ご縁」と「タイミング」だなと実感します。流れの中、どこかで誰かの感触が違ったら、まったく違う形、違うメンバーになっていたかも知れない。ほんの些細な事でなにかが大きく変わる、世の常です。

 11月13日、脚本執筆開始。この時点で「脚本完成後にお声をかける」メンバーはほぼ決めています。ご本人は何も知らないまま、いつも通りの「勝手にアテガキ」のはじまりです。

 (つづく)

 

▼next

movie.kamuin.com

▼この記事以前のことは、個人ブログに書いていました。