【神威組2020製作日誌】④クラウドファンディング【不定期連載】

 2020年1月8日午前7時。期待と不安が大きく入り混じる中、運命のクラウドファンディング、『映画「スモーキー・アンド・ビター」製作支援プロジェクト』がスタート。

 その前に、さかのぼること半年前…2019年7月、僕の自宅PCのモニターには、同じCAMPFIREの画面に【「ハートボイルド・フィクション」公開支援プロジェクト】のタイトルがありました。

 この時のクラファンは「製作支援」ではなく、上映会の開催や劇場公開へ向けての活動費を募る「公開支援」でした。製作費(50万円)は従来通りの持ち出し。

 

f:id:kyojikamui:20200324185908j:plain

 

    目標120万円、ご支援額49万3000円。達成率41%。

 ご支援額から手数料やリタ―ン経費を引き、実際に手元に残る額は「191,477円」経費が膨れ上がったのは苦しい戦いだったから。追加リタ―ン費や広告費が余計にかかり、実質額がどんどん減るという悪循環。それでも19万円は決して安いおカネではありません。ご支援額は主に東京プレミアの会場費に充てさせていただきました。ご支援いただいた方々への感謝は計り知れないものがあります。

 とはいえ、達成率41%という結果は「惨敗」。

   クラウドファンディングは主催者の「信用の可視化」。つまり、この時点での僕の信用度は「41%」ということだ。これがクラファンの怖さ。

 例えば、完成した映画を観ていただいた後の評価なら何も怖くないのです。結果どちらに転ぼうが、誰に何を言われようが誰がどう思おうが一切気にしないのです。ただクラファンは、何も観てもらってない中で「さて、僕を信用してください」ですから。映画以前に、人間・神威杏次個人の問題なのです。そこに度胸がいるのです。

 おまけに、長編は神威組初の試みであり「現場スタッフゼロ?大丈夫なの?」という心配はあったでしょう。当然です。普通に考えたら大丈夫ではないですから。普通に考えたら無茶な条件で映画を作っているのだから、そう思われるのも無理はない。おまけに「ハートボイルド・フィクション」という未知なる代物の全貌は、この時点でほぼ僕しか知らない。信用してくれというほうに無理がある。

 結果、ほぼ孤独な戦いだったことも大きな敗因。終了間際に、見てられないとばかりに中川ミコが参戦、twitterやブログで発信してくれたことにも助けられたけど、、

 そりゃ悔しかったです。勉強になりました。

そして、密かに、2020年の再挑戦を心に誓いました。

 

f:id:kyojikamui:20200324190023j:plain

 

 その後、映画「ハートボイルド・フィクション」は、9月の東京プレミアの後、多くの方の助力によって、関西ミニシアターのメッカである十三・シアターセブンでの大阪上映が決定。この東京→大阪の流れが大きかった。連続して続いた上映によって、神威組を、ハートボイルド・フィクションを、愛してくれる方々が少なからず現れてくれました。そしてその力が、熱量が、2020年1月「スモーキー・アンド。・ビター」製作支援プロジェクト、奇跡の115%到達の原動力となる。

 

 なにもかもが前回とは違いました。なにより「独りではなかった」。多くの方が開始前から応援の声を挙げてくれ、俳優陣の協力姿勢も前回とはまったく違っていました。「クラファンは最初の三日間で決まる」という定説に乗っけるために開始一か月前からガンガンと告知。前回のクラファンから応援してくれている方々も熱い言葉で発信してくれる。本当にありがたく、おかげさまで開始三日間で47%、五日間で50%超え。

 その結果以上に「神威組を愛してくれる人たちがいる」ことに感動していました。

 しかし…そこからの中間期が同じプロジェクトとは思えないほどの「見事な無風」。バッタリにもホドがある止まり方で、終了三日前にはアドバンテージを完全に吐き出し100%到達に赤信号が点灯しました。その空気は、最終日の残り数時間まで変わらず。また、準備を進めている映画の製作費は当初の計算を上回り、本当のところは125%(200万円)が必要となっていました。一度は確信した「悲願の100%到達」が再び遠のいた感は強く、それもまた悔しい…と内心、落ち込んでいました。

 

f:id:kyojikamui:20200324202922j:plain

  

   2020年2月14日、バレンタインデーの夜。

 16時「残り8時間、144万円、90%」…残り10%と聞くと、あと少しという印象ですが、最終日にして前日から3万円ほどの増加に留まっている状況では、ここから残り16万円は、ほぼ絶望的な数字に思えました。

 「目標には届かなくても、ご支援いただいた方のためにも、最高に面白い映画にします。」と嬉しいtweetをしてくれたのは平塚千瑛さん。僕もまさに同じ心境になっていました。時刻は20時、残りわずか4時間、そこから……、

 

   僕や俳優陣からの最後のお願いに加えて、ファンやご支援いただいている方々の決死の応援RTが雪だるま式に大きくなっていく。twitterはさながら突然の嵐に。21時20分頃、100%到達の瞬間、物凄いタイミングで充電が切れた僕のスマホには、歓喜や祝福のメッセージ、LINE、電話着信がたくさん。それらに応答することもできないまま、僕はPCの前で、止まらない大粒の涙をキーボードに落としながら、ご支援いただいた方ひとりひとりへの、お礼と必要事項をお聞きするための個別メッセージを猛スピードで書き続けていました。

f:id:kyojikamui:20200324190316j:plain

 目標160万円、ご支援額185万3550円。達成率115%。

 ワールドシリーズで優勝したくらいの歓喜の渦の中、終了後にメッセージをくれたのはCAMPFIREの、昨年の「ハートボイルド・フィクション」クラウドファンディングの時の担当者さま。お言葉お借りします。

 「最後のスパート、多くの方がプロジェクトの応援を発信し一つの大きな塊のように進んでいく様子に鳥肌が立ちました。」いやほんと、鳥肌でした。
 
 そんな激震の一夜が明け、僕は、おおいなる感謝と共に、この時点で大苦戦中の次なるミッションを考えていました。理想を言えばクラファン中に発表したかった「プレミア上映会決定」の報ですが、その会場確保がままならず、結局、ようやく決まったのは、リハーサルも始まった3月の頭。その直前まで「果たして年内に開催できるのか?」な状況だったのです。そこで、たまたまキャンセルが出たのが「9月12日」の枠。

 3月1日 東京プレミア、会場確保!

 これでようやく、昨年密かに心に誓った「もうひとつの雪辱」へ向かえる。

 もうひとつの雪辱=「座・高円寺2」250席×3回=750席。一日限りの映画上映会のキャパとしては「アタマおかしい」レベルの【750席への挑戦】です。


(つづく)