【神威組2020製作日誌】②脚本【不定期連載】

 「ハートボイルド・フィクション」大阪上映を終え東京に戻った時点で、おおまかなキャスティング構想が固まり、

 2019年11月13日、いつも通り「勝手にアテガキ」開始。

 脚本執筆に関しては、普段、大抵の人に「神威さん、書くの早い!」と驚かれます。実際、書き始めるとめちゃくちゃ早いです。できているものの一部改訂なんて音速でやりますが、実は、それ以前のプロットを固める段階で物凄く時間がかかるのです。

 プロットや脚本は全体のプロジェクトにとって「ゼロからイチ」の作業ですが、さらに細分化した「ゼロから0.2」に、めちゃくちゃ悩むのです。めちゃくちゃ早いのは「0.2から1」です。

 さらに今回は、特にその段階で悩む事情がありました。

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 これは映画の脚本書く人なら誰しも同じでしょうが「数億円の予算を使える映画の脚本」ならスラスラ書けるはずです。脚本コンテストに出すだけならそれで良い。海の上、山の中、どこかの孤島でもルート66でも、好き勝手に舞台設定できるなら。もちろんそんな恵まれた環境にあるはずもなく、僕らは、与えられた条件で「撮り切ることが可能な台本」を作る必要があります。

 2018年からの映画製作、「マイ・ガール」「アンナ」「ハートボイルド・フィクション」の脚本は、当然のことながら「今の神威組の条件で作れるもの」を書きました。製作費が三倍あったら、まったく違う展開の物語になったはずです。それはそういうものです。「ハートボイルド・フィクション」は、ご覧いただいた方はわかるでしょうが、長編ながら実は「ほぼ会話劇」なのです。

 

 「ドロップキック禁止」「タックル禁止」両手両足を縛られたような偏向ルールを全部飲んで、モハメド・アリと15Rを闘い抜いたアントニオ猪木さんの心境。「どんな条件だろうと、なにがなんでもやる」の一念。それがなにより大事なことでした。

 そんな神威組の次回作、同じことをしても仕方なく。やるからには、前回やりたくてもできなかったことの中から、ひとつでも多く「今回はこんなことできました♪」にしなければ意味がない。

 

 当初、10月に脚本を仕上げるつもりでプロットを書き始めていました。ところが、プロットを進める→「こんなもんどこで撮る気だ」→ロケ地探しに変わる→みつからない→プロットに戻る→「こんな場所、日本のどこにあるんだ?あったとしても、どうやって通うんだ?」→ロケ場所探し。「ロケバス借りる?全員をホテルに泊める?絶対無理。」→プロットに戻る→……の無限ループ。

 前回までなら、やりたい舞台設定をあきらめて確実に撮影可能な脚本に切り替えたでしょう。でも、今回はそれじゃダメなのです。
 
 最終的に「書いちゃえ」になりました。

 どこでロケしてどう撮るかは後から考えよう。無理ならそこで考えよう。春の撮影から逆算するとクラウドファンディングは1月から2月、そこに間に合わせるには年内に概要を固めて発表までしないと間に合わない。脚本完成のリミットは12月一週目。あと三週。「とにかく書こう」となったのが11月13日。

 今回、当初から自分の中で「めっちゃカムイキョウジ」な作風にしたいと思っていました。といってもわかる人のほうが少ないですが、僕の舞台脚本「獰猛犬」や「虹彩~IRIS~」を知っている人ならわかるお話。元来、僕の脚本は「無国籍」で「時代考証関係なし」なのです。だからロケ場所がみつからない。大がかりなセットを作るか、米軍基地近辺の街並みを借り切るしかない。そんなおカネはない。でもやりたい、全編思いっきりは無理としても、片鱗だけでも。

 いいや、書いちゃえ。

 12月3日、脚本完成。以前に個人ブログに書きましたが、そこからの一週間はすさまじい行動力で、みるみるキャストが内定していき、9日後の12月12日には、都内で、坂本三成さんと萩田博之さん(蜂谷さんは所用で欠席)に状況説明と意思確認MTG、あっという間に「始動」となりました。

 CAMPFIREの担当者に連絡を取ると、どうやら僕のTwitterをチェックしてくれていたようで「こちらから連絡しようと思っていたところです。」と。なら話は早い。クラファン用のページをチャチャっと作成→審査提出。12月18日、SNSにてキャスト発表開始。クラファン開始三日のスタートダッシュに照準を合わせて三週間前からの告知開始。

 幸い、キャスト発表にたくさんの方が反応してくださり、期待とプレッシャーがグングンと上がっていく中、僕はあることを思い出していました。

 そう、11月13日に「後回し」にしたままになっていた重大な懸念。

 「ところで、これ、どこで撮るの?」

 

(つづく)

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