【神威組2020製作日誌】⑦宣伝・配給【不定期連載】

 「やっとこの日を迎えた…」 2020年11月11日15時、池袋シネマ・ロサさまでの公開情報が解禁となり、ひとつ、先へと進んだ安堵感を感じていました。

 

 情報解禁だけで、どうしてそんな安堵感が…と思われるかも知れませんが、この日を迎えるまで、池袋と大阪の準備を同時に進めながら、それなりにいろんなことがあり、オフレコ情報に触れずに誰かに相談するというのも面倒ではあったので、ただ黙々とやるべきことを進めていました。

 

 その間、自分がやっていたことは「配給」です。もちろん素人。神威映画は「配給:TEAMKAMUI」です。配給会社がついていないから自分ひとりでやっているだけです。

 

 公開館を決め、チラシ・ポスター・上映素材等を制作し劇場さまに納品するのは配給会社の仕事です。その後の宣伝もそうでしょうが、大変な業務です。もちろん宣材制作費も配給持ちです。ここでの経費を捻出するまでに、安い映画の入場料で果たして何人のお客様に来てもらわなきゃいけないの?と計算すると、軽く眩暈がしますが…。

 

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 それらの納品を終え、チェックを終え、いつでも上映できる状況が整って「情報解禁」になります。ただ意味なく情報公開を禁じているのではなく、以降、仮に配給側になにかあっても劇場は予定通りに上映できるという担保が整ってからの情報公開なのでしょう。なるほど…と思いました。勉強させて頂いています。

 

 つまり「これであらかた整った」が昨日の「情報解禁」です。それが安堵感の意味。「ここまで終わった…」と同時に「王様の耳はロバの耳」から解放される自由感。

 

 配給会社もついてないのによく決まるなと誰かに言われましたが、特別な方法や企業秘密があるわけではありません。20年前の映画活動と同じ、正面からまともに「上映してください」とお願いして、映画を観ていただきご判断を待つ。上映が決まったら、これ用意してくださいと指導されたものを用意する。やっていることはただそれだけです。各劇場さまの英断に感謝です。

 

 が、ここで喜んではいられません「結果=動員数」が重要だからです。今月(2020年11月)の大阪シアターセブン、来年(2021年1月~2月)の池袋シネマ・ロサでの結果が、以後の神威組の命運を占います。

 次に「どこに向かうか」が決まる鍵。 今はそのプレッシャーで倒れそうです。

 

 告知や宣伝・集客は大変です。できればそんなことしたくありません。他の人に任せて、監督や俳優などプレイヤーの立場で「興味ある方はどうぞ」とスマートに構えていられたらどんなに楽でしょう。はい次!と、次回作の構想を考えていられたらどんなに楽しいでしょう。でも、自分は「宣伝・配給」係なので頑張ります。そこの苦しい部分を一緒に戦ってくれる仲間には感謝です。

 

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 2019年3月23日『ハートボイルド・フィクション』のキャスト顔合わせの日、みんなの前で言ったこと。「とにかく、なんとしても『劇場公開作品』にする。」

 神威組は自主製作です。それは、大手の映画会社や製作会社が絡んでいないという意味で、どこまでいってもその事実は変わりません。北野映画でさえハリウッドへいったら「インディーズ映画」のカテゴリーに入るのと同じ意味です。ただ、いわゆる「自主映画」と見下し気味に言われることは、最初から嫌でした。

 

「プロが、プロの意識をもって撮っている自主映画」

 

 横浜シネマノヴェチェントの館主、箕輪さんがトークショーの中でそう表現してくれました。その時にも触れた話ではありますが、自分は、俳優としてプロの現場に呼んでいただき、プロの方の仕事を目の当たりにして映画の作り方を覚えました。100人超の監督、100人超のカメラマン、その数倍の人数のスタッフさん、皆さんの動きを見ていて自然に覚えたものです。ノウハウだけではないプロ意識も。感謝しています。

 

 その時代のスキルや意識を使って映画を撮っている以上「守りたいもの」があります。

 

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 これもトークで箕輪さんと話したことですが、方法論が多様化しプロとアマの境が曖昧になっている今、なにをもって「自分たちはプロである」と主張するのか。誰もが発信力、宣伝力を有し、自称・芸能人に誰でもなれる時代。難しいことではあります。それは、もはや「当人の意識と行動」でしか表せないものかも知れません。

 

 1990年代、Vシネマが多く作られている頃、作品の評価のメインはレンタルビデオ店での回転率でした。ただ、その前に数日、劇場で公開をかけ「劇場公開作品」と銘打つ場合があった。目的は、作品価値を(ビデオの価格を)あげるためです。また、そこでお客様がガラガラでも劇場側が損をしないだけの「保証料」を配給が劇場に支払う方法もありました(今でもあるのかどうかは知りません)。それでも「Vシネマ」か「映画」かで、その後の扱いが違ったのです。だから、お金を払ってでも劇場で公開した。ビデオのパッケージにはわざわざ大きな文字で「劇場公開作品」と刻まれた。もちろん、神威組はお金がないので、そんな手は使っていませんが。目的や手段は違えど「『映画』というステータスに拘る」想いは同じです。

 

 だから、映画祭のプレミアステータス(劇場公開済の作品は映画祭の審査対象にならない場合が多い)など気にせず映画完成後、一直線に劇場公開を目指しました。一般的に、劇場公開を実現するための手形として映画祭受賞が欲しいという構図はわかります。たぶんそれが普通の順番なのでしょう。それも良いと思いますし、実際、自作もいくつか条件とタイミングの合うものに応募することもあります。そりゃ誰かに評価されるに越したことはないですから。それはそれでいいと思いますが、ここは一直線に「とにかく劇場公開」でした。

 

 想いは幸いなことに叶えていただきました。「スモーキ~」のみならず、なんと「ハートボイルド・フィクション」までが「劇場公開映画」となりました。各映画情報サイトに題名や情報が掲載されている状況を眺めながら、時折、夢を見ているような気持ちになります。

 

 加えて、シネマ・ロサ様は、都内映画館の中でも特に昭和の雰囲気を残す劇場です。チケット売り場にしてもロビーにしても、僕らが子供の頃からみていた映画館の雰囲気がそのまま残っています。そこで自分の映画を観てもらえる喜びを噛みしめたいと思います。

 

 小さいながら「映画を愛する想い」に溢れた横浜シネマノヴェチェント。関西ミニシアターのメッカ、十三シアターセブン。関東インディーズの聖地、池袋シネマ・ロサ。これ以上ない恵まれた環境で『夢の続き』を見に行きます。

 

movie.kamuin.com

 

  

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